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Charming Times No.26

<2024年9月発行 / 26th Edition>

Charming Times No.26

目次 Index

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Charming Times No.26 (PDFバージョン)


– 主催プログラム –

2024総会/フォーラム 実施報告

  1. フォーラム報告
  2. フォーラム 参加者感想① 瀧浦その子さん
  3. フォーラム 参加者感想② オンバダ香織さん
  4. 2024総会報告

日時 :2024年6月1日(土) 14:00-16:30
   14:00 会員総会  
   15:00 フォーラム
場所 :在日大韓キリスト教大阪北部教会

フォーラム報告

6月1日の会員総会の第二部として、同日午後3時から「すべての陽性者が必要な治療を受けられるために」 と題して総会フォーラムが開催されました。全ての HIV 陽性者が途切れることなく治療を続けるためにはどうしたら良いのか? 私たちが直面している現状を、医療費助成制度が成立したときを知る薬害エイズ関係者の立場から、医療現場でHIV 陽性者を診療する医療者の立場から、そして制度改正を検討するエイズ学会理事の立場から、以下の3人の方の意見を伺い、今後私たちが進むべき方向について話し合いました。

このフォーラムには現地参加者が38名、オンライン参加者が18名、合計57名の方々が現状と課題に耳を傾けました。登壇者は以下の方々でした。

登壇者:
若生治友さん(ネットワーク医療と人権 理事長)
白野 倫徳さん (大阪市立総合医療センター 感染症内科部長、CHARM 理事)
岡本 学さん (大阪医療センター ソーシャルワーカー、日本エイズ学会理事)

司会者:
松浦 基夫さん(CHARM 理事長)


フォーラム 参加者感想①

瀧浦その子 (大阪市立総合医療センターMSW)


総会フォーラムでは近年課題となっている、すべてのHIV陽性者が適切な医療を受けるためには身体障害者認定の基準に障壁があり、これから各自で何ができるのか「すべてのHIV陽性者が必要な治療を受けられるために」というテーマで討論しました。母国で治療を開始されていた外国人など日本では医療費の助成を受けるために、一般的に利用する身体障害者手帳の認定基準をデータが揃わないなどの理由で満たさず、申請が難しい現状がある中、ネットトワーク医療と人権の若生氏、当院の白野医師、日本エイズ学会理事の岡本MSWより発表がありました。若生氏からは薬害エイズ事件を機に免疫機能障害の身体障害者手帳が設立された「差別」から「福祉」の対象になった経緯など、踏み込んだお話を聞くことができ、40年間の歴史の中でHIV医療には様々な方の発信や協力があったからこそ薬害以外のHIV陽性者も医療面や福祉面が充実し、このことはやはりとても重要なことで、今後も伝え続けていかなければならないと再認識いたしました。


ただ、一方でHIV陽性が判明したらすぐに治療開始することが世界的に推奨されている中で、制度が適応できずに服薬を開始できない、内服中断を選択せざるを得ない症例もあり、時代や世界水準の治療に合わせた法制度の見直し、改正や新たな制度作り、代替えなどをしていかなければいけなく、どのようなところでも適切な医療を受けることができるような国になってほしいと願います。フォーラムの中でもそれが簡単ではないことを痛感しましたが、エイズ学会や医療機関、行政、NPO、NGOなどが協働して乖離のない社会を作れるようMSWとしてより意識を高め、発信や啓発を地道に続けていきたいと思いました。


フォーラム 参加者感想②

オンバダ香織 (CHARM スタッフ)

CHARM総会フォーラムでは、薬害エイズ被害の被害者を支援する立場から若生さん、医療者の立場から白野さん、そして制度変革に向けて議論をしている立場から岡本さんにそれぞれの視点からの問題提起をしていただきました。


どれも、普通は少なくとも1~2時間以上かけてお話いただくような中身の濃い内容で、各登壇者の皆さまには15分という、これまた無茶な時間設定をお願いしましたが、大変わかりやすくお話をいただき、この30数年の歴史の振り返りとこれからについて学ぶことができました。

より良く変化しているものがある一方で、海外から日本に来られた方が医療に繋がらないという現状は、CHARMでも日々感じている課題の一つですが、その中で「コミュニティの協働が大事である」という意見がありました。CHARMは一民間団体として、これまでたくさんの方々からご支援・ご協力をいただき成長することが出来ていますが、長くこの分野で活動をしてきた経験や知識、実績を生かし、コミュニティに積極的に働きかけていくことで社会的な責任を果たさねばと、改めて感じる機会となりました。


2024総会報告


2024会員総会は、2024年6月1日(土曜日)午後2時〜2時30分まで、在日大韓キリスト教会北部教会1階集会室を会場に開催されました。

総会は正会員数42名のうち、出席者17名、委任状20名、合計37名で正会員総数の2分の1以上の出席があり、成立しました。

理事長の松浦基夫が開会宣言をし、議長には理事から福村和美が選任され、議事を進めました。

議事は第1号議案 2023年度事業報告の件、第2号議案 2023年度決算報告の件、第3号議案 2024年度事業計画および活動予算案の件、第4号議案 理事および監事の重任の件、の全てが全員異議なくこれを承認し、可決されました。最後に第4号議案として議事録署名人2名(瀧浦その子、庵原典子)が選任されました。

総会には正会員のほか、サポーターやCHARMERの皆さんなど合計で37名の方々が集まりました。総会は14時30分に終了しました。

その後、全体写真撮影、お茶で交流をし、その間にMASH大阪によるHIV/AIDSの取組年表が紹介されました。


すべてのプログラムが終了した後、CHARM事務所に場を移し、懇親会を開きました。小さな事務所に28名の皆さんが所狭しと肩を寄せ合い、日頃CHARMと関わっているタイや韓国の仲間が作ってくれた料理を楽しみました。


– CHARM活動報告 –

実習生受け入れ

大手前国際大学看護学科〜こんな夏季実習でした~  
三田洋子


7月29日〜8月2日大手前国際大学看護学生1年生6名の実習が無事に終了しました。今年からCHARMスタッフのオンバダ香織と協同で実習を行いました。JICAへ参加しセネガルへと飛び込んだ彼女の世界を視野に入れた姿勢には学生も刺激を受けた様です。

大学が示した実習目的は以下のものでした。「外国人の置かれた現状ややさしい日本語、性感染症などを学ぶ。外国人を中心とした多様性、文化的、社会的、歴史的背景を理解する。健康への支援、活用できる社会資源を知り、そこで求められる役割や多様性に応じた関わり方で健康支援と看護を実施する、そしてグローバル人材としての看護師として対象との関りを考え、学ぶ。」CHARMの実習では、各部が取り組んでいる支援活動について学び、最終的に外国人の支援、性感染症検査へのCHARMの関わり方を通して外国人が日本で安心して暮らすための支援活動の在り方を学び、検査前説明資材を作成し理解を深めてもらうことにしました。

大手前国際大学の学生は外国に興味を持つ若者が多く、参加した6人中4人が海外の留学を経験しており驚きました。とは言え、数か月前までは高校生ですので、CHARM実習計画書を確認した時は、HIVについては、聞いたことはあるが知らないことで関心は低かったと話しています。実習初日に先ずは、自己紹介を兼ね「私が看護師を目指した理由」を発表し改めて目的意識を確認する作業から始めます。講師は経験豊富なCHARMスタッフです。講義内容は、「日本の医療機関での外国人患者受け入れ体制について」「医療通訳の現状」「日本の保険制度」「多言語情報発信」「留学生支援事業」「HIV/AIDS歴史、背景、現状、STD」、グループワーク等、学生が理解しやすい様に工夫します。学生達は講義を聴きながらなるほどと納得したり、他国の現状に日本の感染予防対策の遅れを感じたりと様々な感想を持てたようです。そして最終日には、検査前説明資材の「STDの感染経路について」「結果が陽性である場合について」の2枚を作成し発表しました。今回の講義で得た知識や想像を膨らませ、若い発想で多言語に説明を切り替える時は国旗を押すと変換する、漫画絵でわかりやすく表示する等と工夫がされています。最終感想では、HIVの正しい知識を知ることが予防につながる。外国人の立場に立った言葉の壁を考える機会になった。日本の共通認識は世界の共通認識ではないことがわかった。紛争のなかで広がるHIV感染の広がりを知った。知らないことを知ろうとすることが大事である等と感想がありました。今回は知識を得ることのみでなく、世界を視野に入れた考え方のきっかけになったと思います。地域でのNPO、NGO等の支援活動を理解し、今後の看護の場面で役立てることを期待します。


多文化キャンプ

オンバダ香織

今年のキャンプは9月21日(土)〜22日(日)1泊2日で京都YMCAリトリートセンターにて開催されました。

参加者18名(外国籍6名、新規参加者2名)、子ども11名(幼児2名、小学生6名、中学生3名)、医療者5名(医師1名、薬剤師2名、看護師2名)、北陸HIV情報センター1名、CHARMスタッフ4名、合計39名でした。

一日目は少人数のグループディスカッションを行いましたが、参加者は近況報告や最近気になっていることなどをシェアしました。初参加の方もすぐに打ち解けられる雰囲気があるのが、この多文化キャンプの特徴です。また参加者から繋がった、腎臓に関する専門看護師の方を交えて、身体にやさしい食事の工夫についての座談会を行いました。長い服薬生活を送る参加者にとって食事は大きな関心事であり、座談会が終わったあとも質問は尽きませんでした。そして夜は待ちに待ったBBQ❤おいしいお肉や魚、焼きそば等々、上げ膳据え膳でご提供くださる京都YMCAのY’sメンズクラブの皆さまには感謝しかありません。今年もお腹いっぱい心もいっぱい満たされました。


また今回は榎本てる子さんを偲んでメモリアルキルトづくりをしました。初日の夕方からキルトを広げ、てるちゃんを知っている人も知らない人もキルトを囲んで沢山おしゃべりしながらチクチク・ぬいぬい。てるちゃんがいた頃のキャンプは、彼女を囲んで夜通しワイワイするのが恒例でした。そういえば最近のキャンプは楽しかったけど静かだったなあ‥。でも今年のキャンプはてるちゃんのキルトを広げたとたん、みんなが集まり、おしゃべりし、歌って踊っての大宴会!!榎本てる子、天国から参上!!と言わんばかりに、参加者も医療者もスタッフもみんなが交じりあって盛り上がり、やはり多文化キャンプはこうでなきゃ!!と原点に戻った気がしました。


秋雨前線の影響で二日目は早朝から土砂降りの雨。宿舎から食堂への移動は外を歩くため心配していたら、食事の前には雨がピタッと止みました。また降り出したのでバスに乗り込むまでの道を心配したら、その時にはまたピタッと止みました。今回のキャンプは最初から最後までミラクルの連続!!みんなの思いが一つになればいつでも晴れは訪れるものですね。


– CHARMERの紹介 –

今号のCHARMERのみなさん

CHARMERの皆さんを紹介するコーナーです。CHARMERとは日頃からCHARMに関わってくださっている会員、サポーター、当事者、そして事業に関わってくださっている全ての方々の総称です。

次はCHARMERのあなたにもお願いするかも知れません。その際はぜひご協力ください。

● 紹介項目

お名前
(1) CHARMとの出会い
(2) CHARMでしていること
(3) CHARMに関わってよかったこと
(4) 今後どのように関わっていきたいか
(5) 好き、またはおすすめの食べ物/本/その他
(6) CHARMへの思いや、他のCHARMERのみなさんへの一言!


今回のCHARMERは下記の3名です。ご協力、ありがとうございます。

  1. 出林富夢 (いでばやし とむ) さん
  2. 奥野有佳 (おくの ゆか) さん
  3. 宮本愛梨沙 (みやもと ありさ) さん

① 出林富夢 (いでばやし とむ) さん


(1) CHARMとの出会い
(答) distaでは、通訳でサポートできる団体があるかと聞いて、CHARMについて教えてくれました。

(2) CHARMでしていること
(答) HIV検査の通訳サポート

(3) CHARMに関わってよかったこと
(答) 通訳経験を増やすのはもちろんですが、HIVをはじめ、結核、日本の福祉制度などにおける知識を得ることができました。

(4) 今後どのように関わっていきたいか
(答) もっと通訳でサポートできればと思います。

(5) 好き、またはおすすめの食べ物/本/その他
(答) 「his〜恋するつもりなんてなかった〜」という映画が大好きです(宮沢氷魚さんはイケメンでもあります🥰)。

(6) CHARMへの思いや、他のCHARMERのみなさんへの一言!
(答) 2011年に来日しました。この13年間に色々な手伝いやサポートをいただきました。そのサポートのおかげで他人を支えることができるようになりました。ぜひ支えになることができるなら言ってほしいですが、それよりも覚えておいてほしいのは、困ったら一人で対応する必要がないということ。支える人は、支えられてきた人です。


奥野有佳 (おくの ゆか) さん


(1) CHARMとの出会い
(答) 読書会へのお誘いがきっかけ

(2) CHARMでしていること
(答) 読書会(と付属のビールの会)参加。CHARM主催のフォーラム、集会の聴講。

(3) CHARMに関わってよかったこと
(答) ありきたりな表現ですが、世界が広がりました。読書会やCHARMのイベントに参加した後、数日間は色々と反芻して考えてしまいます。

(4) 今後どのように関わっていきたいか
(答) 模索中。私はHIV陽性者でも、医療従事者でもソーシャルワーカーでも通訳でもありません。当事者でもサポーターでもないことに、所在なさと後ろめたさを感じて「CHARMの中で自分ができることは何でしょう?」 と、いつもの占い師に聞いたら「何もない。枯れ葉も山の賑わいでね、ただの数合わせでいいですよ。でも、そこはあなたにとって、とても恵みのある場所ですよ」と言われました。とりあえず、今の私のためになるなら、いずれはCHARMのためにもなることもあるかな、と都合よく思っています。

(5) 好き、またはおすすめの食べ物/本/その他
(答) 食べ物は焼餃子より水餃子ですが、なんでも美味しくいただきます。食べものの好き嫌いは全くないですが、人の好き嫌い、わりとあります。は一度読んだきりですが、宝物のように想うのは、中勘助の「銀の匙」。何かが覚醒したのは、オノ・ヨーコの「グレ-プフルーツジュース」。音楽はほとんど聴きませんが、数年前にアルゼンチンのカルロスアギーレを知って以来、ずっと時々聴いてます。これを書いていて、ネット検索したら、今年の11月の来日コンサートの記事見つけました!! 狂喜の真っただ中です。

(6) CHARMへの思いや、他のCHARMERのみなさんへの一言!
(答) 今回は、CHARMERとして紹介していただいて、とても嬉しいです。「NPO」と聞いて、敷居が高い気がしていたのですが、自分で勝手に「あちら側とこちら側」なんて線引きをしていただけなのだなぁ、と気づきました。早く無駄な境界がなくなって、もっと世界が広く、近くなればよいなと思います。
そして、読書会は、今や私の月一回の楽しみです。皆さま、お気軽にご参加ください。
ちなみに写真は、友人の父親が北海道の木彫りの熊を作るつもりで生まれたプーさんです。脱力系可愛さ満点で「それでいいのだ」と励ましてもらってます。


宮本愛梨沙 (みやもと ありさ) さん

(1) CHARMとの出会い
(答) 病院で勤務していた頃、松浦先生にHIV診療を学び、宇高先生から多文化キャンプを紹介していただいたのがきっかけです。

(2) CHARMでしていること
(答) 昨年初めて多文化キャンプに参加させていただきました。

(3) CHARMに関わってよかったこと
(答) キャンプに参加し、微力ではありましたが私でも役に立てることがあって嬉しかったです。

(4) 今後どのように関わっていきたいか
(答) 薬剤師として、一人の宮本愛梨沙として、役に立てるのならばできる限りお手伝いさせていただきたいです。

(5) 好き、またはおすすめの食べ物/本/その他
(答) 休みの日は食べ飲み歩き、もしくはキックボクシングかバスケをして過ごしています。最近はジンやラムのお酒にハマっています。

(6) CHARMへの思いや、他のCHARMERのみなさんへの一言!
(答) CHARMのスタッフさんの献身的なご活躍に毎度感銘を受けております。
私もみなさんのように患者さんの思いを尊重しつつ、サポートできるよう頑張ります!よろしくお願いいたします😀


– NETWORK –

CHARMと関わりのある個人/団体・組織について紹介する当コーナー「NETWORK」。
今回はベトナム人コミュニティ「MiHAN」でメンバーとして活動されているグエン ティ スエンさんより「MiHAN」の活動を紹介していただきました。

●ベトナム人コミュニティ「MiHAN」の活動について

グエン ティ スエン (MiHANコアメンバー 看護師)

皆さん、こんにちは!

私はグエンティスエンと申します。ベトナムから参りました。
2019年6月に看護師国家試験に受けるためにEPA看護師候補者として初めて来日しました。
(EPAとは日越政府間の経済連携協定によるベトナム人看護師・介護福祉士候補者を日本に受け入れるプログラムです。)

現在、東京で看護師として働くかたわらMiHANの活動をしています。私はMiHANのコアメンバーとして、健康相談会やオンライン健康相談対応等の活動を運営しております。それ以外は依頼されるときに医療通訳のボランティアとして受診に行くベトナム人をサポートしております。

MiHAN(Migrant Health Action Network)は、移民の健康活動ネットワークの省略で、日本に住むベトナム人のために、結核をはじめとする感染症の啓発や医療アクセス支援に取り組んでいます。MiHANの活動のなかで日本在住ベトナム人のための結核の啓発や早期発見、医療アクセス支援のために、3つの方法でベトナム人にコミュニケーションやアプローチをしています。

1.ベトナム人がよく見るFacebook(FB)などのSNSやソーシャルメディアで結核の啓発をする方法です。
2.ベトナム人が多く集まるようなイベント会場で、結核の啓発や健康相談会をする方法です。
3.MiHANのSNS健康相談:MiHANのFBのチャット経由で、ベトナム人から寄せられる健康相談に、対応する方法です。


MiHANのSNS健康相談に相談が入る場合には、ベトナム語でニーズを聞き取り、保健医療の専門家と連携して、ニーズに合う支援情報の提供や医療機関への紹介、受診のための支援などを行っています。

このように相談をしてきたベトナム人が、早期受診や健康診断を受け、健康課題の早期発見、早期治療ができるように取り組んでいます。


2021年にMiHANがベトナム移民を対象とした健康調査を実施しました。結果のなかで、日本に住むベトナム人の行動の特徴は、何か健康問題があった時、医療の専門的な相談先を知らない多くのベトナム人が、ベトナム語のFBのようなSNSコミュニティの中で、専門家ではない人たちに相談する傾向があります。不確実な情報も多く、ベトナム人の受診の遅れにつながるなどの問題が起きています。そういう背景の中でMiHANは、MiHAN のFBを通じて、保健医療の専門家と連携して健康相談対応や適切な助言ができることが、強みです。

・健康相談会には多くのベトナム人が訪れ、医師ボランティアによる健康相談を受けました。
・健康相談時に、必要に応じて医療機関へ受診できるよう、紹介状を用意して、渡しました。
・健康相談会の後に、医療機関を受診するための支援が必要な人には、SNSでフォローアップをしました。
この健康相談会の参加者の中に、日本でこれまでに一度も医療機関を受診したことがない人たちは少なくないです。

MiHANの活動を通じて日本に滞在するベトナム人たちは何か健康問題があったら日本医療機関で受診するときに色んな困ることがあるとわかるようになりました。
例えば、日本では、全ての医療機関に医療通訳者を手配する仕組みがないため、機械通訳を使う医療機関もありますが、医療に関するすべての内容を正確に通訳できない課題があります。

また会社の通訳者が通訳したが、訓練された医療通訳者ではないため、説明が曖昧で、患者さんはとても不安になりました。

他は、日本語能力試験N3取得者であっても、医療分野の日本語は、日常会話で使う日本語と全く違ったので、医師の説明をすべて理解することはできませんでした。

MiHANの活動の結果からみると、ベトナム語で健康相談ができるこの活動は継続して、さらに強化することが必要だと思います。

MiHANが毎年大阪や東京のベトナムフェスティバルで無料健康相談を行っています。MiHANに関心を持っている人たちにぜひ紹介してください。ありがとうございます。

MiHANのFacebook
https://www.facebook.com/tbactionnet


– HIVと人々 –

●特定技能で来日したビビアンさんの体験談

聞き手 : 竹野翠(CHARMスタッフ)

HIVとともにありながらも移住者として日本でたくましく生きるビビアンさんにお話を伺いました。


CHARM(以下C):日本に来たきっかけは?
ビビアン(以下):子どものころからモーニング娘。が大好きで日本語を勉強していました。日本には特定技能のビザで来ました。

C:日本に来る前からHIVの治療をされていましたが、医療面での不安はありませんでしたか?
:特にありませんでした。長い間ウイルス量はコントロールされていました。家族は私がHIV陽性であることを知っていて、イギリス在住の姉が「人権で医療を受ける権利が保障されているから、日本でもサポートしてくれる人がいるはず」と言いました。実際、日本にいる友人にCHARMを紹介してもらい拠点病院につながることが出来ました。

C:日本に来てからの経験を教えてください。
:私は来日後A社で働き始めました。自宅は同じ職場の外国人労働者2人との相部屋でした。仕事は毎日楽しかったですが、ある日突然HIVを理由にクビにされました。毎日薬を飲んでいるのを相部屋の人が報告したのだと思います。HIVはきちんと薬を飲んでいれば人に感染しないので安心してほしいと社長に説明しようとしましたが、そのチャンスは与えられないまま会社を辞めることになりました。辞めるときに日本語で書かれた書類にサインをし、自己都合退社にされていたことも後からわかりました。

C:それは明らかに人権侵害ですよね?社長と戦おうと思わなかったのですか?
:そんなパワーは当時の私にはありませんでした。大好きで憧れていたはずの日本でこんな扱いを受けていることがとても悲しく、悔しかったです。この経験から「日本では絶対にHIVに感染しているとバレてはいけない」と思うようになりました。

C:その後、転職活動を始めたのですね。
:はい、私のビザで出来そうな仕事に手当たり次第エントリーしました。転職活動もとても辛かったです。退職理由としてHIVのことを話せないので自分でそれなりの理由を考えましたが、真実ではないので上手く説明することが出来ていませんでした。何社も不採用が続いていたとき、幸いB社から採用と言われました。しかし、B社の登録支援機関(仲介業者のようなもの)からもう一度A社の退職理由を確認されすべて話しました。「知ってしまった以上B社に報告しないといけない」と登録支援機関に言われましたが、B社は、HIVは日常生活では感染しないということを理解し、そこで働けることになりました。

C:理解ある会社に出会うことができたんですね。すべて話そうと思ったのは、その人を信頼できそうだったからですか?
:うーん、その頃は「ダメだったら帰ろう」と思っていたし、登録支援機関は「仲間」の立場だと言われたので。もし私の隠しごとが後でバレた場合、私を庇うことが出来ない。だから嘘はつかないでと言われました。
C:なるほど…。
:会社との直接契約だったら隠しごとがバレても自分の責任ですけど、間に人がいるとそれを見抜けなかったその人の責任にもなるのでおかしくなりますね。

C:ビビアンさんはこんなに辛い思いをたくさんしているのに、なぜまだ日本にいようと思えるのですか?
:まだモー娘。に会う夢を諦めてませんよ(笑)。それに、このまま帰るのは悔しいです。家族に「あなたは幼い性格だから海外で働くのは無理」と言われました。確かに私も日本人は優しいだろうという甘えを持って来ましたが、今帰ると言われた通りになってしまうのでもう少し頑張りたいと思っています。
私は理解ある会社に出会うことが出来ましたが、それまでの面接で嘘をついて自分を隠すのは本当に辛かったです。母国ではゲイであること、HIV陽性であることをひた隠しにはしていませんでしたが、社会に受け入れられているという感覚がありました。HIV陽性者が生きやすくなるためには社会全体の知識のアップデートが必要だと思います。もう私は誰にも隠す必要がありませんので、CHARMと一緒に当事者として啓蒙活動を行っていけたらと思います。

C:貴重なお話をありがとうございました。ぜひ一緒に頑張っていきましょう。


特定技能制度とは

中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており、日本の経済・社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきているため、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築するために特定技能制度が創設されました。
「特定技能1号」は特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格であり、「特定技能2号」は特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
出所:出入国在留管理庁ホームページより


●腎臓移植の体験談

月乃 (女性交流会メンバー)

22年前妊娠9ヵ月手前で感染が判明しました。現実を受け入れる間もなく服薬や出産に関することが決まっていき、一か月後わたしの理想と全く違うかたちでの出産となりました。幸い子どもは陰性でしたがつらい思い出しか残っていません。一年後にわたしの心は壊れて服薬できなくなり2年半休薬している間に、ウイルスは更にわたしから未来を奪おうと腎臓を攻撃していたのです。

感染告知から7年後に末期腎不全となり生体腎移植か血液透析かを提案されました。生体腎移植はしないことを伝えると透析病院はどこら辺で受けたいかを考えておくように言われましが、透析も受ける気にならなかったので決めずにいました。感染を知られないために人付き合いを遮断していたわたしには透析病院に感染を伝えることは受け入れ難いことだったのです。それに血液透析患者が透析翌日まで体調不良で動けないという番組を視たということもあり、透析を受けてまで生きるメリットが全くないと思いました。そのような理由でなかなか決めないわたしに医師が提案したのが腹膜透析という聞いたこともない方法でした。自分で透析するため新たに病院へ通う必要がなく、一日数回毎日するので体調変化もとても少ないという、わたしの不安を解消できるものでした。当初腹膜透析をすすめられなかった理由は免疫のこともあり腹膜炎の可能性が高いため血液透析をすすめていたとのことでした。それに加えて最近知ったことですが、血液透析の治療を打診していた病院すべてからHIVを理由に断られていたようでした。腹膜透析を約2年半していましたが、腹膜が傷んだため治療を変更せざる負えなくなりました。そのときに家族より腎提供してもらえることになって、国内2例目のHIV感染者の腎移植を行いました。国内症例がない中、たくさんの方がご尽力くださったおかげで無事移植に成功し、10年以上たった今も、ありがたいことに一度も入院することなく元気に過せております。

移植前までは子どものために親がHIVだと知られないよう存在を消して生活していましたが、子どものためと言いつつ自分が一番自分を差別していたから極端に人を避けて生活していたのだと腎移植をしてやっと気づけました。病気のおかげで出会えた人、捉え方も変わったのでありがたいなぁと思います。良くも悪くも、人生そう思えばそうなる。


– Health –

●琉球弧での自衛隊基地拡大について ― 宮古島に行って

大阿久佳乃 (おおあく よしの) 文筆家

近年琉球弧(りゅうきゅうこ)と呼ばれる島々には相次いで自衛隊ミサイル基地が建設されている。そのことを知ったのは2024年3月、マイノリティ宣教センター主催の宮古島での研修に参加したときのことだった。それまで沖縄には日本における米軍基地が集中的に建設され、住民の生活をさまざまな危険に晒していることは知っていた。しかし自衛隊基地までも、とは初耳だった。

日本政府は周辺の軍事的緊張を理由に2010年、九州南端から台湾へと連なる南西諸島で自衛隊の体制強化(いわゆる「南西シフト」)を決定している。2016年には与那国島、2019年には宮古島と奄美大島、そして2023年には石垣島に新たな基地が建設された*1。いわゆる沖縄返還が起こった1972年に比べ、自衛隊基地面積は4.9倍になったという*2。今後も施設の積極的な強化が行われようとしており、実際、今年(2024年)はうるま市の勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊が配備された*3。そしてこれらは、住民の声に耳を傾けないまま行われたことである。

米軍基地の存在に併せ、琉球弧へのこのような合意のない軍事施設の集中は、そこに住む人々と、例えば関西に住む私との間に、リスクの差異に基づいた様々な不公正を齎(もたら)す。戦争が始まった際日本の他の地域に先んじて危険に晒される可能性が高くなることは、おそらく最も直感的に理解しやすいリスク・不公正のひとつだろう(実際、想定されているシナリオは琉球弧を捨て石のように見なすものである*4)。さまざまな不公正のなかで今回特別に取り上げたいのは、環境に関するもの、すなわち環境不正義のことだ。

沖縄大学名誉教授・桜井国俊氏によると、製造業らしい製造業のない沖縄において、主な環境汚染源は、第一に軍事基地、軍事活動だという*5。沖縄ではかねてから、基地から漏れ出るがんや免疫システムへのマイナス影響、乳児低体重等さまざまな健康被害を及ぼす可能性のある有機フッ素化合物(PFAS)による汚染が問題となってきた*6。

もちろん自衛隊基地にはPFASの他、化学薬品や重金属等様々な有害物質が蓄えられている。それらは管理に失敗すれば周辺環境に多大な悪影響を及ぼす。それはミサイル基地ではない全国の自衛隊基地でも同じことだが、宮古島は宮古島特有の地理条件によって、基地はより住民の生活を脅かすものとなりうる。それは、宮古島には川がなく、水源をすべて地下水に頼っているということだ。ひとたび地下水が汚染されれば、すべての島民に影響が及ぶ。しかも、駐屯地は一部活断層の上に建ち、その地盤は軟弱なものだという。当然ここに建てることにより、住民の生活に対するリスクは大きく高まる。また、駐屯地よりほど近い航空自衛隊のレーダー基地があり、対中国用の電波傍受施設が置かれている。そこからはEU基準の2000倍の電磁波が放たれており、こちらも健康に対する安全性が証明されたものではない*7。これらのリスクにも関わらず、この駐屯地は宮古島の島民との合意なしに建てられてしまい、今も抗議が続いている。

撮影:同志社大学 神学部のセネック英花ヴィクトリアさん


環境不正義とは、環境正義が達成されていない状況のことである。環境正義とは、汚染、有害な開発、資源の枯渇といった負担およびそのリスクを平等なものにすることだ。環境不正義に対する抗議、すなわち環境正義運動は、アメリカで1980年代ごろから盛り上がりを見せ始めた。これはいわゆる有色人種の権利獲得運動と大きく関係がある。なぜなら、環境不正義による被害を被って来たのは、黒人やヒスパニック、先住民をはじめとする人種的マイノリティや、そうでなくても非常に貧しい暮らしを強いられていた人々であったからだ。

日本でも無縁の話ではない。これまで日本ではさまざまな環境不正義が起こって来た。四大公害や原発がわかりやすい例だろう。水俣病とつねに向き合い続けた原田正純医師の言葉は、日本で起こっていることと環境不正義という言葉を繋げるのに示唆的な役割を果たしてくれる。「僕も最初は病気のせいで水俣病患者が差別されていると思っていた。だが、世界各地の公害現場を歩くうちに、差別されている場所に公害というしわ寄せがくるとわかった。原発も都会で使う電力を地方でつくり、廃棄物まで押し付けられる」。

撮影:同志社大学 神学部のセネック英花ヴィクトリアさん


宮古島をはじめとする琉球弧での米軍・自衛隊基地は環境不正義をはっきりと示している。どうしてここに住む私には先に述べた環境リスクが少なく、どうして琉球弧に住む人々のそれは大きいのか。どうして私は自衛隊基地のことを知らないままでいることができたのか。そう考えると、不平等を引き起こしている側に立っている私が見えてくる。2023年には94万人弱もの人が宮古島を訪れたという。しかし自衛隊基地のことを知りつつ来た人も、自衛隊基地のことを知って帰った人も殆どいないだろう。どれだけ近くに行っても、関心を外れたものは見えてこない。――私たちはすでに琉球弧を捨て石にしているのだろうか?

*1 https://www.tokyo-np.co.jp/article/291869
*2 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-05-15/2024051501_01_0.html
*3 https://www.qab.co.jp/news/20240319205599.html
*4 平和で豊かな沖縄をもとめて 「復帰50年」を問う. (2022). 宮本憲一ほか(著). おきなわ住民自治研究所 (編).自治体問題研究所 P. 46
*5 同書. P.30
*6 同書. P. 32
*7 https://www.chosyu-journal.jp/heiwa/16322

大阿久佳乃さんの活動をXにてご覧いただけます。  https://x.com/YoshinoOaku


– 事務局から –


●20周年記念募金「つなぐ・まもる・つむぐ」報告

募集期間2022年6月1日〜2023年12月31日
募金の趣旨は、CHARMがこれまで行ってきた国内外の団体との連携(つなぐ)をさらに強化し、HIV陽性者や外国人の健康と権利を守るための活動を前に進め(まもる)、人々が出会い、関わり、共同する(つむぐ)機会を創り出す取り組みを大胆に進めるための経費を多くの方達に支援していただくことを目的としました。
実施募集期間2022年6月1日から2023年12月31日までの1年半の間で目標額200万円に対して2022年度は729,000円、2023年度は675,00円、合計1,404,000円でした。
一般寄付と合わせて、20年の歴史の中で最も多くの支援を受けることができました。募金により20周年記念事業として実施した国際フォーラム、国内フォーラム、記念パーティーを開催、またホームページリニューアルや記念グッズを作成し、多くの方にCHARMを知っていただくツールを作ることができました。
また募金を通して、CHARMの活動をよりわかりやすく社会に広めていくことの大切さを痛感しました。


2024年度CHARM会費、サポーター費納入のお願い

今年度の会費、サポーター費の納入をお願いします。皆さまからの会費はCHARMの運営に欠かせないものです。どうぞご協力ください。
なお、サポーター種類の変更などをご希望の方はご遠慮なく、CHARMまでお知らせください。

詳しい振込情報は下記のリンクをご覧いただけます。
https://www.charmjapan.com/join/supporter/


CHARMサポーターを募集中!

CHARMの活動に参加しませんか?CHARMはともに活動する人々をCHARMER (チャーマー)と呼んでいます。それは支援する、支援されるという枠や立場を超えて、みんなで「すべての人が健康に過ごせる社会」を目指したいからです。 あなたもCHARMER (チャーマー) になりませんか!
*CHARMER(チャーマー):会員をはじめ、事業メンバー、プログラムスタッフ、ボランティアなど、CHARMで活動に関わっているすべての人の総称です。

➿️サポーターになる (費用は 4/1 〜 翌 3/31 までの1年間)➿️

・サポーター(賛助員) A (Supporter A)   3,000円
・サポーター(賛助員) B (Supporter B)    5,000円
・団体/法人サポーター 1口 (Corporate Supporter)  10,000円

正会員についてはCHARM事務局までお問い合わせください。

会費・寄付を銀行振込のほか、クレジットカード決済できます。
https://www.charmjapan.com/join/supporter/

振込先情報は 
※クレジットカード決済は「コングラント(congrant)」経由で会費・寄付をしていただけるようになりました。
ご都合のいいお支払い方法を選んでください。
*会費も寄付も継続決済ではなく、その都度、お手続きしていただく必要があります。


編集後記

「フォーラム」の報告で、すでに海外で治療を開始し、抗ウィルス薬を服薬しているHIV陽性者が来日し、生活するのに、日本の医療費補助制度が、世界基準の変化に対応せず、制度を利用できない課題を再確認した。また更新されていないのは制度のみならず、日本国内におけるHIV/AIDSの情報のアップデートや正しい知識が一般的に行き渡らず、「HIVと人々」で来日したビビアンさんが体験されたような差別が今日の日本でも起きていることがとても残念に感じる。ただ「NETWORK」でのMiHANのようなコミュニティーの同胞支援活動があることを知り少しホッとしたが、外国籍住民が置かれる状況が依然として厳しいと感じた。(P)

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