<2023年11月発行 / 24th Edition>
目次 Index
- 特集 A 20周年記念事業/20周年記念パーティー実施報告
- 特別企画 ① CHARMERの紹介
- 特集 B CHARM設立20周年「私とHIV」(3/4)
- CHARM 活動レポート 多文化キャンプ / 日本エイズ学会学術集会
- HIVと人々 外国人のためのCHARM
- 特別企画 ② ちょう個人的!すきやねん大阪
- NETWORK そらにじひめじ訪問記
- 事務局から 2023会員総会報告 / 20周年募金 ( 2年目 ) 経過報告
- CHARMサポーターを募集のご案内
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Charming Times No.24 (PDFバージョン)
– 特集 A –
20周年記念事業/20周年記念パーティー実施報告
日時 :2023年9月30日(土) 13:30-16:00
場所 :Bazaar Café
参加者:50名 + オンライン4名
- 13:30 開会挨拶/自己紹介
- 14:10 海外参加者からのお話
- 14:40 現在の活動紹介/雑談
- 15:45 HIV歴史について(理事長)
- 17:00 閉会
●CHARM 20周年記念パーティー ・・・ 福村和美
20周年おめでとうございます。秋晴れのこの日、CHARMに携わった人たちが同じ場所にあつまり、「CHARM20周年記念パーティー」を開催することができました。
50名以上の方々が、再会を喜び、元気をもらって帰られたのではないでしょうか。
私は、「誰が来てくれるのかな?」ワクワクしながら会場に早めに到着。Bazaar Caféのお庭を見渡すと、なんと、てるちゃんとツーショットがとれる看板があって、うれしくなりました。また、デッキにはBazaar Café 25周年の看板を発見。「居場所づくりとして設立したカフェも25周年かー」とコロナの3年半の苦しみは遠のき、昔懐かしい思い出がよみがえってきました。思えば、20数年前に、Bazaar Caféで保健師向けの研修が開催された時に初めてこの場所を訪れ、てるちゃんの講義をうけました。その後も、訪れることはありましたが、京都に来たのは3年半ぶり、やっと普通の生活ができる安堵感と喜びに浸っていました。
続々と皆さん会場入り、久しぶりの再会に自然と笑顔になっていました。スタッフの提案で誕生日ごとにわかれて、自己紹介をしました。様々なプログラムがあるCHARMなので、小グループでの自己紹介は本当によかった。チャームとの出会いやつながりを聞きながら・・・あっという間に打ち解けて、温かいきもちになったところで、みんなで乾杯です。
恒例の揚げ春巻き、キンパ、 ヤンニョンチキン、エスニックなおいしい料理に舌鼓を打ちました。次は、海外からの参加者とZOOMでつながる。ゲストスピーカーは、(オーストラリア)(アメリカ)(ドイツ)(インド)の4人の方から近況報告とCHARMとの関わりや思いを聞きました。時差の関係で朝早く起きて参加してくれたり、新しい家族のお披露目があったり、CHARMの活動を経て、旅立ち、国際的に活動しておられる方々の報告に感銘を受けました。人との出会いや、きっかけなのでしょうが、自分自身のやるべき道筋や人生に影響を与えてきたと感じるCHARMの魅力「あたたかさ」にふれる瞬間でした。
次にCHARMの20年のふりかえりと現在のCHARMの活動を3つ紹介していただきました。私は、土曜検査やひよっこクラブ、女性交流会等のプログラムに参加し、人とのつながりを持つ中で、成長させていただきました。気がつけば、20周年記念パーティーで司会をすることになるなんて不思議な気分です。1)医療通訳 2)そよかぜ・つむぐ 3)交換留学生生活医療支援、どれもこれも、制度のはざまで、生きづらさをかかえた方々の寄り添い支援が基本になっている活動報告でした。
次のプログラムは、遠方からのご参加を代表して、みえちゃん、ジェイソンによるケーキカットの時間です。フルーツたっぷりの上に20周年記念ロゴの入ったケーキ(きっと写真が載ってるはず)は味も抜群でした。
あっという間に時間は経過し、いよいよ終盤です。理事長から「医師としての私の歩みはHIV感染症の歴史にぴったりと重なっている」人生そのものなんだと思いました。「らい予防法」を下敷きにした「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(いわゆるエイズ予防法)」は、HIV陽性者は感染を拡大させる元凶として取り締まるかのような法律であり、陽性者の医療や福祉に対する言及はなかったということや、薬害エイズ訴訟で1996年、国と製薬会社は責任を認めて和解が成立し、国は被害者救済のための恒久対策を実現することを約束し、エイズ診療拠点病院の整備などにつながった。などは忘れてはならないHIV感染症の歴史だと思います。
HIVとの出会いから、陽性者の告知や陽性者の居場所づくり、診療の在り方、HIVと暮らし、すべての人がいきいきと暮らし、医療につながれることを目的に制度の隙間を埋めてきた。治療は進歩し、慢性疾患となったHIV感染症ですが、今なお、高齢化したときに、HIV陽性者を支える仕組みがまだまだ整っていない。医療、保健、福祉行政の手の届かない部分で彼らを支えることは、CHARMの新たな課題ではないかなど、問題提起をしていただきました。医療と福祉のアクセスから外れている外国籍のHIV陽性の人のニーズに対応する必要を感じた医療従事者やカウンセラーが中心となり、CHARMは設立されました。通訳派遣等の外国人支援も併せて、今後もCHARMの活動は、細く、長く、広くつながっていきます。様々な人とのつながりが、新たな課題に気づかせてくれます。そのつながりを大切にしながら、これからもCHARMとつながっていただければ幸いです。
●参加者の声
・駆け出し社会人だった2010年の私は、白野先生にCHARMのことを教えてもらい人生がぐるりと変わりました。青木さんとてる子さんの熱意、スタッフの皆さんの創意工夫への敬意と感謝。25周年を超えたこれからのCHARMの未来にも、乾杯です! (来住知美)
・It was a great party at a wonderful place (Bazaar Cafe)! I could meet some old friends and make new friends, too. Thank you, CHARM! (Santa)
・懐かしい顔にたくさん再会できて、とてもとてもよい時間でした。少しずつですが、みなさんと話をしながら、各事業の「あの頃」を思い出して、懐かしく、あたたかい気持ちになりました。参加できて本当によかったです。ありがとうございました。これを機に、再度つながっていけたり、新しい何かができていったりするといいですね。 (岳中美江・熊本在住)
・CHARMさんのこれまでの歩みを知り、様々な分野の方の協力と繋がりがあるCHARMさんの活動に関わることができていることをうれしく思いました。 (照井典子)
・CHARM20周年パーティーに京都に行って参加したかった!のですが、ちょっと遠いのでzoomでオーストラリアから参加しました。
私はずーっと前にCHARMを物理的には離れたにも関わらず、今回のパーティーに参加して今でもCHARMの一員のように感じることができ嬉しかったです。私の原点はCHARMにある!と勝手に信じています。
私は今大学院で公衆衛生を学んでいます。これまでアフリカで取り組んできたHIVや結核対策の経験を振り返り、地域保健について学びを深めたいと思っています。また、アメリカの彩夏さんも熊本の岳中さんも公衆衛生を実践しておられると聞き、皆さんの経験をじっくり伺いたいとも思いました。
パーティーの雰囲気を感じることができましたし、スクリーン越しに声をかけてくださった皆さんの笑顔からはそれぞれに歩みを続けていらっしゃるようで、またどこかで再会したり、活動を共にできる日を楽しみにしています。 (松岡裕子・オーストラリア・ダーウィン在住)
・先日はチャームの20周年記念パーティーに参加させていただきありがとうございました。 数年ぶりに、(事務局の皆さんを含む) たくさんの皆さんにお会いすることができとても嬉しかったです。 また知り合いの通訳者にも偶然再会でき、2人で手を取り合って?!喜びました。 チャームの皆さんがどれほど社会のために貢献されてきたか、世界の多くの人の必要のために使命感をもって働かれてこられたか、改めて具体的にお聞きすることができました。 医療通訳者としてこれからも少しでもお手伝いできたらと思っています。よろしくお願いいたします。 (後藤)
●バザールカフェ ・・・ 狭間明日実
ー CHARM設立20周年おめでとうございます! ー
バザールカフェ事務局の狭間と申します。CHARMとバザールカフェは、伏見で行われていた「健康フェスタ」で協働したり、支援について相談し合ったり、長~いお付き合いをしてきました。
バザールカフェは、京都御苑や同志社大学のそばにある、ヴォーリズ建築の建物と広い庭をもつカフェです。週5日の営業で人気なのは日替わり料理。タイやフィリピン、韓国など、その国の出身であったりルーツをもつ人が、日替わりで母国の料理をつくって提供しています。
1998年、宣教師館だった建物を100人あまりのボランティアで改装し、庭のデッキやテーブルなどを手作りし、誰にでも開かれたカフェとしてオープンしました。当時のボランティアには牧師や建築家、アーティスト、支援者、学生、HIV陽性者や外国人、セクシャルマイノリティの方、じつに多様な方々がいました。あらゆる人が交わり共に作業するなかで、「どんな人も当たり前に隣にいる」という感覚を互いに獲得し、さらにそれぞれの存在を尊重し合うことを、25年間、試行錯誤しながら実践してきました。
近年、「社会的孤立」「包括的支援」といったことが注目されるなか、地域社会においてバザールカフェの認知や必要性が高まっていることを感じます。地域の支援者から相談を受けたり連携することが増えました。また、誰もが使える食券を誰かが買って置いていく「サンガイ飯」の取り組みが、地域でも徐々に広がってきています。一人一人が選べる居どころが社会にもっとたくさんあったらいいなと思いますし、今あるバザールカフェやCHARMのような活動の波紋を、仲間とともに社会に少しずつ広げていきたいと思います。
バザールカフェには、社会から排除されがちな人々と共に生きる、という意義が明確にあるものの、この場にはご機嫌な人もいれば、ほっといてほしい人もいれば、名づけのないしんどさを持った人もいます。カテゴリー化を避け、匿名性を守り、いろんなことを曖昧にして活動していると、どうしても言葉で表せない部分が出てきます。それってどんなこと?と気になった方は、ぜひ一度カフェに足を運び、この場所の空気を体感していただけると嬉しいです。緑に囲まれた空間で、ほかほかの料理とともにお待ちしています。
*バザールカフェは2023年9月30日に開催されたCHARM設立20周年記念パーティーの会場となり、美味しい食事と美しい記念スイーツを提供してくださいました。
Bazaar Café (バザールカフェ) 京都市上京区岡松町267番 Tel.075-411-2379
– 特別企画 ① –
CHARMERの紹介
今回が3回目になるCHARMERの皆さんを紹介するコーナーです。
CHARMERとは日頃からCHARMに関わってくださっている会員、サポーター、当事者、そして事業に関わってくださっている全ての方々の総称です。
次はCHARMERのあなたにもお願いするかも知れません。その際はぜひご協力ください。
● 紹介項目
お名前(フルネーム、イニシャル、ニックネーム など)
(1) CHARMとの出会い
(2) CHARMでしていること
(3) CHARMに関わってよかったこと
(4) 今後どのように関わっていきたいか
(5) 好き、またはおすすめの食べ物/本/その他
(6) CHARMへの思いや、他のCHARMERのみなさんへの一言!
今回のCHARMERは下記の3名です。ご協力、ありがとうございます。
① ありす さん
(1) CHARM設立前の20数年前、HIV/AIDSに少し関わる仕事をしていた関係で、CHARMの関係者の方々との出会いがあり、CHARM設立後はボランティアにスライドした感じです。
(2) 今は在宅支援の「そよかぜ」と「つむぐ」にかかわっています。
(3) ボランティアとして参加するとき、「私は私の時間と技術を提供していますが、それ以上のものをたくさんいただいている」といつも感じています。それは出会いだったり、考え方だったり、ちょっとした刺激だったり、いろいろなきっかけだったりします。その結果として、私の引き出しを少し増やすことが出来たのではないかと感謝しています。
(4) 体力・気力と相談しながら・・・
(5) 着物を着ることも大好きなのですが、最近のマイブームは古い着物や帯をほどいて洋服やバッグなどにリメイクすること。出来上がっていく過程が楽しいです。
食べ物のマイブームはジャム作り。今の季節だとりんごが作りやすくおすすめです。
もう一つフレンチトースト作りにハマっていて、これはずいぶん腕が上がりました。
(6) エイズ対策に限りませんが、いろいろな場所で総合的な対策や支援として「保健・医療・福祉の連携」という言葉はよく言われます。さらに「教育」と「NPO/NGO(ボランティア)」を加えることでより効果的な体系になると思います。
CHARMに参加してより実感したところです。
② 伊達しゅん さん
(1) 2005年頃、榎本てる子さんとの出会いがあり、HIV陽性の人と会って話をしてほしいと頼まれ、話をする場所がCHARMでした。
(2) HIV陽性の当事者の立場から話をしたり、エイズ学会や会議への出席、パンフレット印刷物のデザイン、プログラムでは「ひよっこクラブ」のスタッフをしていました。
(3) 年齢・性別・国籍・セクシュアリティを超え、多くの友達ができ視野が広がりました。家族同然のお付き合いをしている友達もできました。
(4)HIV陽性の当事者の声や発想が必要な場面でお役に立てればと思っています。新しいプログラムや勉強会の企画などにも興味があります。
(5) 好きな食べ物はズバリ、チーズとパンです!世界のナチュラルチーズのことなら何でも聞いて下さい。
音楽は若い頃から尾崎豊が大好きで、愛・自由・平和など、彼の表現した世界観に影響を受け育ちました。同じくファンだという方、友達になりませんか。
(6) CHARMでは、外国籍で日本に暮らす人々を「外国人」とは呼ばず、「外国籍住民」と呼びます。外の国の人ではなく、みんな日本に暮らす同じ仲間だという思いからです。私はこの考え方が大好きです。また、CHARMでは、「すべての人が健康に暮らせる社会を目指して」という考えの元に、すべての人々に門戸を広げた活動を行っています。
私もCHARMの仲間ですから、その視点を大切に社会と関わって行きたいと思っています。
③ LEW(リュー) さん
(1) 通訳の仲間に「CHARMという団体があるよ」とうかがい、研修に参加したのがきっかけでした。
(2) 医療通訳をしています。医療者と患者の間に立ち、言葉の媒介・文化の仲介をします。病院や保健所へ行くこともあれば、オンラインで対応することもあります。
(3) 困っている人に自分のスキルを活かせることです。喜んでくれている皆の笑顔を見ると、自己肯定感にもつながりますし、社会にも貢献できてよかったと思えます。
(4) これからも細く長く通訳者として活動できるように、絶えず精進してまいります。
他にもできることがあれば、ぜひ協力させてください。
(5) 好きな場所は図書館です。調べ物はもちろんのこと、気持ちを落ち着かせたいときは図書館に行きます。写真は佐賀県の武雄市図書館です。
(6) 外国で病いにかかるのは心身ともに、とてもつらいことです。見返りを求めずに献身的に人を助けることは、本当にすばらしいと思います。一人の外国人として感謝します。これからも一人のCHARMERとして、周りのCHARMERと手を取り合いながら、前へ歩んでいきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
– 特集 B –
CHARM設立20周年「私とHIV」
HIV感染症との歩みをふりかえって (第 3 回 / 全 4 回) ・・・ CHARM理事長 松浦基夫
<1996年 スマイル>
JHCに参加していた陽性者の一人から、陽性者のための勉強会を作りたいので協力してほしいと依頼された。1996年10月に始まったこの会は「スマイル」と命名され、2ヵ月に1回程度、弁天町の貸し会議室で、各方面の専門家を呼んできてレクチャーをしていただいた。毎回10~15人が参加していたと記憶しているが、ほぼ毎回私も参加した。当時はまだネット環境は整っておらず、会の連絡は郵送に頼らざるを得なかった。主催されていた方は、参加者の名簿の管理・案内文の作成・郵送など、大変なご苦労があったものと想像される。特に参加者のプライバシーの保持は難しいものがあり、2年余りで解散せざるを得なくなった。
この頃に堺病院を受診した若い陽性者を、その会のメンバーに紹介して一緒に話をした時の、彼のほっとした顔が忘れられない。
<2000年-2002年 SWITCH>
大阪のゲイコミュニティーの中でHIVに関する予防啓発活動をおこなっている「MASH大阪」が中心となり、行政・研究者との協働で「SWITCH 2000」と称するHIV検査イベントがおこなわれた。プライバシーが守られる環境の中で安心して検査を受けられる態勢を整え、5月の連休の3日間で245名が受検した。採血した検体は大阪府立公衆衛生研究所(現大阪健康安全基盤研究所)に運び、スクリーニング検査をPA法で行い、陽性ならばWB法で確認検査をして採血の翌日には最終結果をお知らせするものであり、検査を通じて予防介入すること、相談・支援を組み入れた検査イベントであることが特徴である。このSWITCHは2000-2002年の3年間おこなわれ、計800名近くが検査を受けた。
私は3年間を通じてこのイベントに参加し、HIV検査の「結果お知らせ」を担当した。HIV陽性の結果を本人に伝えることは難しいが、HIV陰性者に対してHIVに対する偏見やスティグマを植え付けることなく陰性の結果を伝えることも難しいことを痛感した。
<2002年-2009年 土曜常設HIV検査・相談事業>
2000年前後に関西のエイズ診療拠点病院に複数の外国籍AIDS患者が運び込まれる事態が起こった。いずれも医療保険が無く、AIDSを発症して初めてHIV感染を知った人たちであった。医療と福祉のアクセスから外れている外国籍のHIV陽性の人のニーズに対応する必要を感じた医療従事者やカウンセラーが中心となって、CHARMは設立された。
SWITCH 2000-2002の取り組み中で、大阪のゲイコミュニティーにおけるHIV検査・相談事業の必要性が確認され、「土曜常設HIV検査・相談事業」に引き継がれた。CHARM が大阪府・市よりの委託を受けておこなった事業である。CHARM設立直後に「毎週土曜日、堂山で常設のHIV検査をおこなうことになったので手伝ってほしい」と依頼され、2009年9月までの7年間、毎週土曜日の検査・相談事業に月1回のペースで参加した。「結果お知らせ」を担当したが、参加しているスタッフにHIV/AIDSの基礎知識をレクチャーすることも役割の一つとなった。
7年間で13,953人が受検、13,525人(96.9%)が結果を受け取り、HIV陽性は119人(陽性率0.85%)で、陽性結果を受け取ったのは115人、紹介した医療機関からの受診回答は87件(76%)であった。12,360人(89%)から有効なアンケート回答が得られ、その結果からは受検者の18%がMSM*であった。全国の保健所・保健センターにおけるHIV検査の陽性率が0.2%台であったことに比べると、0.85%という陽性率は高く、HIV感染のリスクの高い状態に置かれた人が受検しやすい環境を整えることができた結果と考えられる。この7年間に、医師24名・保健師25名・看護師14名・カウンセラー7名・その他38名(計108名)が、それぞれの研修を受けた上で検査相談事業にかかわった。
2006年に結果説明用資材として「両面パンフレット」を作成した。A4サイズで、一方の面にはHIV陽性の人へ「最初にこれだけは伝えたい」というメッセージを記載、もう一方の面にはHIV陰性の人に対するメッセージを記載したものである。HIV陰性の人が陽性者へのメッセージを目にすることにより、客観的にHIV陽性の意味を理解してもらえるように工夫した。このパンフレットは大阪府・大阪市をはじめとして多くの自治体で採用され、後にエイズ予防財団で7言語に翻訳されて全国の保健所・拠点病院に配布された。今なお、CHARMの財産といえる。
*MSM : men who have sex with men, 男性と性交渉をする男性
<2009年-2020年 ひよっこクラブ>
CHARMの実施するプログラムの一つで、陽性者支援の一環としてHIV陽性とわかって間もない人のための少人数制のグループミーティングである。同じ立場の人同士が集い話をすることでこれからの生活のより良いスタートにつなげていくことを目的としている。進行役はスタッフサポーター1名・ピアサポーター (HIV陽性者) 1名に加えて、医療情報セッションで医師1名が参加する。このプログラムは年に3~4回おこなわれ、各回2~6名が参加した。私は医療情報セッションで「メディカルスタッフ」としてHIVに関する情報をレクチャーする役割を担当した。参加しているHIV陽性者たちは、診察室の中では聞きにくい質問を繰り出してくるので、陽性者がどのようなことに悩み、どのようなことを疑問に思っているのかを学ぶことができ、私にとって貴重な経験となった。
(次号に続く)
*注:個人の所属、肩書きは当時のものです
※第1回は下記のリンク
↓↓↓ CharmingTimes22号でご覧いただけます。 ↓↓↓
https://www.charmjapan.com/resources/charmingtimes/charming-times-no-22/#ct22C
※第2回は下記のリンク
↓↓↓ CharmingTimes23号ご覧いただけます。↓↓↓ https://www.charmjapan.com/resources/charmingtimes/charming-times-no-23/#ct23C
– CHARM 活動レポート –
●多文化キャンプの報告 ・・・ 竹野翠
多文化キャンプ ~「戻ってこられる場」を継続する大切さ~
8月19日〜20日の1泊2日で4年ぶりに多文化キャンプを実施しました。
直前に体調不良で参加できなくなった方もいらっしゃいましたが、18名の女性たち、8名の子どもたち、8名のスタッフ・ボランティアの計34名という過去最大規模での開催となりました。
多文化キャンプは2007年に初めて開催され、今年で14回目を迎えました。大自然の中で、同じ境遇の女性たちや、医療者たちと、ざっくばらんに話し合うことができる場となっています。
2020年から2022年の3年間は新型コロナウイルス感染症流行の影響で多文化キャンプは中止を余儀なくされ、今年は久々の開催でした。これまで参加したことがある人に加え、初めて参加される方、そして数年ぶりに参加される方も大勢いらっしゃり「コロナで人に会えなかった数年があって、また人に会いたくなった」という声も数多く聞かれました。
今年はプログラムや細かいトークテーマを設定せず、自由に話し合いをしてもらう時間を多く取りました。また、女性からの提案でミュージカル RentのSeasons of Love を練習し、今年も美味しいBBQを提供してくださった京都ワイズメンクラブへのお礼として、みんなで歌いました。歌を通じて、より一体感を高められたように感じます。
以下、今回多文化キャンプに初めて参加したスタッフ竹野の感想です。
今回私が初めて参加して一番強く感じたことは、継続することの大切さです。1年に1回でも、仲間と顔を合わせて話が出来るということは、とても大きな安心に繋がっているのだろうなと皆さんの顔を見て感じました。そして、家庭や仕事が忙しくてしばらく離れていたとしても、ふとした時に帰ってこられる場所があるということも支えになるはずだと思います。事務局のスタッフとしては、そういった「戻ってこられる場」をこれからも維持できるよう努力していきたいと改めて感じました。
●日本エイズ学会学術集会(京都) へのお誘い
2023年のAIDS学会は京都で開催されます。
【現地開催・ライブ配信】
日時:2023年12月3日(日)~12月 5日(火)
会場:リーガロイヤルホテル京都
テーマ ”AIDS”終幕を目指して
「市民フォーラム」と「メモリアルサービス」は参加費不要で参加できます。
皆さま、ぜひお越しください。
※学会参加は有料です。詳細はAIDS学会ホームページをご覧ください。
https://www.c-linkage.co.jp/aids37/
1)市民フォーラム(市民公開講座)
日時:12月3日(日)15:00-21:00
会場:京都駅八条口前AVANTI 9F (龍谷大学響都ホール)
2)メモリアルサービス
日時:12月4日(月)16:45-17:45
会場:リーガロイヤルホテル京都
– HIVと人々 –
外国人のためのCHARM ・・・ エレーラ カディジョ ルルデス ロサリオ (CHARM理事)
20年前にCHARMファミリーの一員になりました。広島大学医学部保健学科で大学院生をしていた時に、当時広島大学病院の高田昇先生にブラジル出身HIV/AIDS当事者であるジョゼ・アラウジョさんの講演会を紹介していただきました。その講演会とその後の懇親会で、日本のHIVエイズの状況や外国人陽性者について聞き、CHARM発起人である榎本てる子さんや青木理恵子さんに出会いました。
私は母国ペルーで厚生労働省の性感染症センターの助産師で、セックスワーカーと仕事をしていると聞いた榎本さんは、日本語と英語で【いつか一緒に活動をしましょう、京都に来ることがあれば、「バザールカフェ」を見に来て】と言われました。CHARMはまだ存在していませんでしたが、あの日、外国人を含むHIV陽性者支援活動を実施するNPOを立ち上げると聞き、渡された「バザールカフェ」の名刺を大事に保管しました。2001年10月に初めてバザールカフェの見学に行き、CHARMの誕生についてもう一度聞きました。当時は、大阪大学で勤務することになっていたので、活動に参加できると思い、CHARMの誕生を楽しみに待ちました。
CHARMが設立されたのちに病院での医療通訳者としてデビューしました。その時は、まだ十分な日本語能力がなかったのですが、助産師であるため医療用語の理解や説明力がありました。そして、CHARMの通訳スタッフとして、通訳だけではなく、やさしい日本語、英語、母国語スペイン語で利用者の健康教育や必要なサポートについて一緒に考えることが私の役割でした。専門用語の勉強をしながら、常に学ばせていただきました。当時は医療通訳者が少なく、HIV・エイズの特徴などを理解し個人の特性に配慮できる通訳者が少なかったため、大阪、京都、神戸、奈良、滋賀、名古屋まで広範囲に出向きました。
大阪で陽性者の母子保健活動とHIV抗体検査活動(SAT)も担当しました。SATでは、資料の翻訳や検査会場の運営、抗体検査対象者への検査内容の案内や検査結果の説明、必要な時に英語もしくはスペイン語の通訳も担当しました。土曜日午後2時から5時まで抗体検査のため数名で会場の運営をしていたことは、素晴らしいチームワークとして印象に残っています。
また、母子保健プログラムで実施していた家庭訪問はもっとも印象的でした。当時日本語ができずに辛い思いをしている外国人女性を家庭訪問し、買い物に行ったり、新生児沐浴の指導をしたり、子守りもしました。15年後にそのお母さんと再会し、日本語はとても上手になり、産後当時の気持ちを初めて語ってくれました。「なぜこのNPOの人は家に来て赤ちゃんの沐浴をしてくれるのかわからなかった。しかし、CHARMのお姉ちゃんが子育てを手伝ってくれたことは忘れられないと子どもにも話をすることがある。ありがとう」
現在、CHARMの理事をしている私にとっては対象者一人ひとりの声を傾聴し、次の20年間も活動を支援したいと考えています。
– 特別企画 ② –
ちょう個人的!すきやねん大阪
こんにちは、Kawaradaです。
私が大阪に引っ越してきてあっという間に10年が経とうとしています。大阪は安くて美味しい食べ物が多く、田舎に比べると交通機関もとっても便利です。面白い人(?)も多いですし、住みやすく魅力いっぱいの都市だと思います。もう他の場所には引っ越せないなと思っています。
ただ自宅も職場も都会なので、田舎出身の私は自然が恋しくなることもあります。そのような時におすすめなのが万博公園です。ご存知の通り1970年に開かれた大阪万博博覧会の会場が現在の「万博記念公園」で、現在も多くの人に親しまれています。
万博といえば岡本太郎さんの代表作である「太陽の塔」がとても有名です。万博公園のケートを通ると目の前にそびえたつ高さ70メートルの塔は圧倒的迫力と存在感があります。塔には未来を象徴する「黄金の顔」、現在を表す「太陽の顔」、そして過去を表す「黒い太陽の顔」という3つの顔があります。明るい未来を願っての金色の顔なのでしょう。塔の中心の少し拗ねている?ボーっとしている?ようにも見える現在の顔。岡本太郎さんの過去は暗かったから黒い顔なのかな?など色々想像を膨らませてしまいます。万博博覧会では4つ目の顔「地底の太陽」が展示されていたようです。塔は過去・現在・未来を貫いて生成する万物のエネルギーの象徴として、50年以上たった現在もその壮大さは全く失われていません。
そして太陽の塔を中心に広がる自然公園では、四季折々の花々や様々なイベントも楽しむことができ、週末にはたくさんの人が訪れます。芝生が広がり、自然に囲まれ開放的な気分になれますよ。子どもが遊具で戯れる中、草木の緑に癒され心身共にリフレッシュでき、日常の忙しさも忘れることができるおすすめスポットです。
また周辺には水族館や観覧車や水遊びのスポット、エキスポシティも隣接しておりショッピングや食事も楽しめ、子連れにはとてもありがたい場所です。そして、2027年秋には西日本最大のアリーナの建設が発表されたばかりです。スポーツやエンターテインメントもさらに活性化されていくことでしょう。
大阪湾に浮かぶ人口の島、夢洲での大阪万博の開催まであと約2年です。一人ひとりが互いの多様性を認め、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催されます。脈々と続く大阪の成長・発展に繋がるような万博で明るい未来を感じることができればと思っています。
– NETWORK –
そらにじひめじ訪問記 ・・・ クリス
2023年7月の暑い日に私はスタッフの青木さんと一緒に「そらにじひめじ」を訪問しました。
姫路の商店街の中に誰でも行ける場所があると聞き、ワクワクして行きました。姫路城に向かう多くの人が行き交う商店街のはずれにその場所はありました。入り口にレインボーフラッグが飾ってあったのですぐにわかりました。迎えてくれたのは猫のはるとなつ、犬のたむでした。中に入ると壁も天井も木でできていてとっても居心地が良く、いつまででも座っていたい感じでした。夕方になるとここに10人ぐらい人が来るんですよと世話人のだいすけさんは話してくれました。
そこで、だいすけさんに話を聞きました。
*クリス以下 ク)
ク) 「そらにじひめじ」とは一言でどんな場所ですか?
LGBTのほか、生活に困っていたり心の病を抱えたりしている人、ひきこもりに悩んでいる人などが、自由に集まり交流できるコミュニティ・スペースです。
場所があってだいたいいつも誰かがいる、というだけです。
ク) 面白いですね。みんなどんな風にこの場を利用するのですか?
使い方は自由です。 本を読んだりゲームをしたり、2階でゴロゴロするのもいいです。ヨガの体験もできます(有料)。猫とぜひ遊んでいってください。「そらにじひめじ」が目指すのは、それぞれが持つ背景や違いをお互いに尊重しながら安心して過ごせるスペースの提供です。
ク) 2階の主は猫たちですね。上がってくる人を全員確認しています。なつは私のことが気に入ったようでさっきから足にまとわりついては、私の足の上に後ろ足を乗せて動きません。まるで「これは私の」と言わんばかりに。初対面だけれど猫に気に入られて嬉しいです。
ク) 「そらにじひめじ」はどうやって運営しているのですか?
参加する際に300円いただいています。それが運営費用になります。それだけでは足りないので、最近食品店を始めました。同じ商店街の中で数軒離れたところです。賞味期限が近い商品を安く売り、多くの人が利用しています。「そらにじひめじ」の最初は、広さ4畳半ぐらいの場所でした。この部屋は今でも無人図書館として今でも活躍しています。個別の相談がある時はこのスペースを使います。
ク) 「そらにじひめじ」は、2023年10月で5周年ですね。おめでとうございます。
商店街の中でほっとできる場が存在することの意味は本当に大きいと思います。今日はありがとうございました。
– 事務局から –
●2023会員総会報告
2023年6月17日、会員総会を実施しました。コロナ禍で過去3年間は文書決議とリモートでの開催でしたが、今年は4年ぶりに対面を主とした会でした。一方、遠方の方や時間が限られている方はリモートで参加しました。在日大韓基督教会大阪北部教会を会場とし30名以上が対面参加、9名がリモート参加でした。正会員の過半数の参加と委任状をもって総会は成立しました。
総会では2022年度事業報告、決算報告、2023年度事業計画案、予算案が承認されました。2022年11月23日に開催された設立20周年記念事業「Asian Forum on HIV and Migration / 移民とHIVに関するアジアフォーラム」の実施報告、2023年度計画案では20周年記念パーティーの開催が案内され、今後認定NPOを申請することが承認されました。
後半のパネルディスカッションは「マイノリティが健康に暮らすためにNGOが果たしてきた役割」を3人のパネラーがそれぞれの視点で、これまで担ってきた役割について話しました。
パネルディスカッション終了後の約30分間は、お茶を飲みながらの交流時間でした。会員さんによるインド本場仕込みのチャイやCHARMがホームページで10言語の情報を提供していることにちなんで10カ国の茶菓子を準備し、数年ぶりに参加者同士での会話が弾みました。
●CHARM設立20周年記念募金「つなぐ・まもる・つむぐ募金」 2年目経過報告
※ 目標額 2,000,000円 (2022年度~2023年度(2023年12月まで))
2022年度 729,000円 (49名)
2023年度 382,000円 (24名) (4月から9月末現在)
総額 1,111,000円
日本において、外国人のための医療体制、保健社会福祉制度はまだまだ途上にあります。CHARMはこれらのさらなる充実を社会に働きかけるため、2022年度2023年度の2ヶ年をかけて記念事業を実施、計画しています。すでに2022年11月にアジアフォーラム、2023年9月に設立20周年記念パーティーを開催することができました。また20周年記念グッズを作成し、皆さまに感謝の気持ちを込めて配っています。今後もその成果を社会に伝え変革の一助となることを願っています。すでに多くの方々にご協力をいただいています。
20周年募金は2023年12月末で終わります。募金期間がわずかとなりましたが、引き続きご協力をよろしくお願い申し上げます。
詳しくはホームページをご覧ください。
www.charmjapan.com/2022/07/charm20annivfund/
●編集後記
前号のニュースレターを発行してからの約半年間、会員総会が数年ぶりに対面で開催されコロナ禍で会えなかったCHARMERのみなさんにもお会いできた。設立20周年記念パーティーでは国内外にいるたくさんの仲間にも再会できて、うれしかった。多文化キャンプも4年ぶりに実施され、また他団体との交流も再開できた。この約4年の間、人との接し方が多様化し、対面以外のオンライン会議やリモートワークなども定着したが、どちらにも長所・短所がある。人との「つながり」は「対面もオンラインもバランスよく!」。今後もCHARMERのみなさんがCHARMに関わっていただけたらうれしいなあと思う。(P)
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